金融庁と法務省が「一体的開示」に関連した法令解釈を公表、FASFは開示ひな型を公表

金融庁と法務省は2018年3月30日、金融商品取引法に基づく有価証券報告書と会社法に基づく事業報告及び計算書類(以下「事業報告等」)との「一体的開示」に関連した法令解釈を公表しました。また、財務会計基準機構(FASF)も同日、両省庁の要請を受けて作成した開示ひな型を公表しました。

金融庁と法務省は2018年3月30日、金融商品取引法に基づく有価証券報告書と会社法に基づく事業報告及び計算書類)との「一体的開示」に関連した法令解釈を公表しました。

I.金融庁と法務省による法令解釈

金融庁と法務省は、2017年12月28日に公表した「一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について」において、「一体的開示」に向けた環境整備の一環として、有価証券報告書と事業報告等の一部について、記載の共通化が可能であることを法令解釈や両省庁が妥当性を確認した開示ひな型などで明確化することを公表しました。公表内容の概要については、会計・監査ニュースフラッシュ 日本経済再生本部、「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について」を公表をご参照ください。

両省庁の要請を受け、FASFでは、開示ひな型「有価証券報告書の開示に関する事項  『一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について』を踏まえた取組」を作成しました。当該ひな型における「作成にあたってのポイント」及び「記載事例」の内容について、両省庁は、関係法令の解釈上、問題ないものと考えられる旨、企業が両書類の記載内容の共通化を行う際には当該ひな型が参考になると考えられる旨を公表しました。

また、金融庁では、記載内容の共通化や両書類の一体化を希望する企業へのサポートのため、企業からの相談窓口を設置しました。相談する場合、金融庁総務企画局企業開示課「記載内容の共通化等サポート」担当の専用アドレスにメールを送付します。

II.FASFによる開示ひな型

開示ひな型は「はじめに」、「記載の共通化に向けた留意点」、「(参考資料)有価証券報告書及び事業報告等の記載項目の対応表」で構成され、両省庁が法令解釈の妥当性を示した「作成にあたってのポイント」及び「記載事例」は、「記載の共通化に向けた留意点」に含まれています。

(1)「はじめに」の主な内容

「はじめに」には、開示ひな型を作成した経緯や目的、利用にあたっての留意点が記載されています。主な留意点として、記載事例があくまでも例示であり、両書類の記載を共通化する場合の様式及び内容を拘束するものではない旨、実際の作成にあたっては、利用者の適切な判断に資するように、個々の企業の実態に応じた適切な開示が望まれる旨が記載されています。

なお、FASF主催のセミナー「有価証券報告書作成上の留意点(平成30年3月期提出用)」において、法令等の改正を伴う項目を除き、記載の共通化を図るかどうかは企業の任意であり、一部の項目に限定して対応することも認められる旨が補足されています。

(2)「記載の共通化に向けた留意点」の主な内容

「記載の共通化に向けた留意点」には、昨年12月に公表された「一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について」で掲げられた項目を主な対象として、「作成にあたってのポイント」、「記載事例」、会社法上の関連規則が紹介されています。「作成にあたってのポイント」によると、多くの項目に関して、現状の有価証券報告書の記載には、事業報告等における要求事項が含まれていると考えられる旨が紹介されている一方、以下の項目については、記載の共通化に際して、追加的な開示が求められる旨、その場合の記載事例(記載事例網掛け部分)が紹介されています。

  • 「主要な設備の状況」/「主要な営業所及び工場」の状況

有価証券報告書の「主要な設備の状況」の記載には、事業報告の「主要な営業所及び工場」の状況の内容を含めることができると考えられる旨、主要な営業拠点を追加開示した場合の記載事例が紹介されています。

  • 「ストックオプション制度の内容」/「新株予約権等に関する事項」

有価証券報告書の「ストックオプション制度の内容」について、付与対象者が役員の場合、その区分及び人数を事業報告の記載区分(社内取締役、社外取締役、取締役以外の会社役員)とすることで記載を共通化できると考えられる旨、また、「ストックオプション制度の内容」における付与対象者の人数について、事業報告で求められている事業年度末時点の人数を付記することで記載を共通化できると考えられる旨、それぞれの場合の記載事例が紹介されています。

  • 「役員の状況」/会社役員の「地位及び担当」並びに「重要な兼職の状況」

有価証券報告書の「役員の状況」の「略歴」について、他の主要な会社の代表取締役に就任している場合に限定されず、他の主要な会社の役員に就任している場合も記載することが可能であり、それによって事業報告における会社役員の「重要な兼職の状況」と記載を共通化できると考えられる旨、その場合の記載事例が紹介されています。

  • 「役員の報酬等」/「会社役員の報酬等」

取締役及び監査役の報酬総額について、有価証券報告書の記載を基礎として、社外役員の報酬総額を社外取締役の報酬総額と社外監査役の報酬総額に区分することにより、記載を共通化できると考えられる旨、その場合の記載事例が紹介されています。

(3)「(参考資料)有価証券報告書及び事業報告等の記載項目の対応表」の主な内容

「(参考資料)有価証券報告書及び事業報告等の記載項目の対応表」には、「一体的開示」を行う場合の実務の参考資料として、現状の有価証券報告書の記載に、事業報告等でのみ記載が求められる事項を追加する場合の記載箇所の例示、その場合の留意事項が対応表形式で記載されています。

例えば、事業報告における「主要な借入先及び借入額」(会社法施行規則120条1項3号)について、有価証券報告書の第2【事業の状況】の3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】に記載する例、「各社外役員の当該事業年度における主な活動状況」(同124条1項4号)について、第4【提出会社の状況】の6【コーポレート・ガバナンスの状況等】に記載する例が示されています。また、有価証券報告書上、連結財務諸表を作成している場合に注記を要しないとされているものの、計算書類では注記が求められる事項として、「関連当事者との取引に関する注記」(会社計算規則98条1項15号、112条)や「1株当たり情報に関する注記」(同98条1項16号、113条)などが紹介されています。

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