AI/RPA時代の働き方改革 - ヒューマンリソースが担う次世代業務

AI/RPA時代の働き方改革 - ヒューマンリソースが担う次世代業務

AI/RPAにより代替されるホワイトカラー業務、それらを実現するテクノロジーに加え、今後人が担うべき次世代のコア業務等のポイントを解説。

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およそ5億3000万年前に生物が初めて眼を得て、カンブリア爆発と呼ばれる突如として急激な進化をし、あらゆる生物の体制が出来上がったことと同じ現象が、今日の機械の世界でも起き始めています。AIやIoTによって眼を持ったロボットが業種を問わず全てのビジネスモデルを変え始めているのです。当然そこでの働き方も変わってきます。人工知能(Artificial Intelligence 以下「AI」という)やロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation 以下「RPA」という)の活用の場は飛躍的に増加し、ホワイトカラーの業務が自動化され、人は重要な業務のみ担えばいい時代がいよいよ到来しました。
AIやRPAの活用により、新たに創出される仕事や、新しく求められる人材・スキルを十分に理解し、しっかりと準備を進め、遂行・実行することにより、市場の拡大が見込め、企業としてのベネフィットを享受することができると共に、次世代にフィットした働き方改革が実現できます。本稿では、AI/RPAにより代替されるホワイトカラー業務、それらを実現するテクノロジーに加え、今後、人(ヒューマンリソース)が担うべき次世代のコア業務やコアスキルなどのポイントについて解説します。

ポイント

  • 多くの企業が取組みを進めているRPAやAIの進化により、ホワイトカラーの分野も自動化が進むことで働き方の変化が起きており、それはルーチンワークだけではなく、知的労働の分野にも拡大している。
  • 自然言語処理を活用した問い合わせ業務、RPAの稼働状況の管理業務、請求書などの非定型帳票や手書き文字の認識・入力・処理をする紙処理業務、膨大な事例や対応を理解し発生した事象の正確な対応を提示する判断業務など、以前のRPAに必要であったルール化された業務の枠を超えたものも自動化が始まっている。
  • それに伴い、新たに創出される仕事や新しく求められる人材・スキルは確かに存在し、それらを十分に理解・準備・遂行・実行することにより次世代にフィットした働き方改革が実現できる。

I.AI/RPAがもたらすビジネスモデルの破壊と創造

1.労働現場の変化

カンブリア爆発を御存じでしょうか。およそ5億4000万年から5億3000万年前のカンブリア紀初期に、突如として一斉に今日見られる生物の体制が出そろった現象をカンブリア爆発と言います。この現象が起こった原因は、この時に初めて眼を持った生物が誕生したことです。眼を持つ生物の優位性は圧倒的であったため、爆発的に多様化が進んだと言われています。今、機械の世界で同じことが起ころうとしています。人工知能(AI)によるディープラーニングとIoTにより、ロボットに眼がつくことになります。この眼により、様々な業種のモデルが爆発的に変わっていきます。この変革を日本企業が担い、優位性を活かし、プラットフォームとなることができるかどうかが今後の発展を大きく左右します。
経済産業省が2017年5月30日に発表した「新産業構造ビジョン」では、AI/RPAを活用した付加価値・生産性向上策を実施しない場合、実施した場合と比較して、2030年度には国内の労働人口の減少分よりはるかに多い、574万人の雇用と222兆円の国内総生産(GDP)が減少すると試算されています(図表1参照)。

図表1 AI/RPAがもたらす労働現場の変化

図表1 AI/RPAがもたらす労働現場の変化

出典: 経済産業省ウェブサイトよりKPMG整理

まさに日本企業にとって、AIやRPA等のデジタル技術を活用し、生産性の向上や付加価値創出を行っていくことに力を入れることが生命線であると言える状況です。
AIをはじめとしたデジタル技術の進歩により、ホワイトカラー業務も自動化が可能になってきています。新たな労働者である「デジタルレイバー(Digital Labor)」が出現し、今までの仕事を代替し始めています。中でも、ホワイトカラーの業務をソフトウェアで自動化するデジタルレイバーの1つの形態であるRPAが、国内企業にも浸透し始めています。AIやRPAの導入は一見、ホワイトカラー業務が奪われてしまうとみられがちです。しかし、その本質を別の視点からとらえると、AI/RPAなどのデジタルレイバーをうまく活用することができれば、仕事の内容・質は変わりますが、高い成長と共に雇用は維持できる、とも言えるのです。英オックスフォード大学オズボーン准教授の調査で言われた47%のなくなる雇用とは、雇用そのものではなく現在の仕事であり、仕事の種類が変わる、つまりAI/RPA時代だからこそ必要なホワイトカラーの仕事が創造され、雇用は維持されると考えられるのです。

2.AI/RPA導入の段階的アプローチとトレンド

RPAは自動化のレベルに応じ、3つの段階に分けて考えられます。RPAを既に導入している企業の大半が実感していることですが、日本市場においても、昨年から定型業務の自動化領域(第1段階)はかなり効果がでており実用化が進んでいます。一方、非定型業務の自動化領域(第2段階)はまだまだ実証段階であり、今後は様々な業務におけるユースケースが増えることが想定されます。

 

(1)定型業務の高度化
その第1段階に当たるのが、「既存技術を統合活用した定型業務の自動化」です。たとえば、「ルールエンジン」、「画面認識(スクリーンスクレイピング)」、「ワークフロー」などの既存技術を統合して活用し、情報取得(クローリング)や入力・突合作業、複数システムのログインといった作業の自動化が可能です。実際に人が画面を操作するのと同様の手続きを記憶させることが可能になり、この取組みの実現のために既存ITシステムの変更や新たなインターフェースの開発は必要ありません。これにより定型業務の自動化を素早く実現することができます。また、先に述べたように既存技術を応用した取組みのため、比較的少ない投資で導入が可能です。例外対応などは人が行わなければならないものの、現在最も実用化が進む領域と言えます。

 

(2)非定型業務の自動化
第2段階が「学習機能および非構造化情報処理による非定型業務の自動化」です。
ディープラーニングや自然言語処理を用いて、非構造化データの読み取りや蓄積情報からのルール作成などを行うというものが該当します。導入事例として、金融機関などにおけるコールセンターの自動応答やチャットボットが豊富にありますが、質疑応答以外のユースケースを増やすことが実用化へのキーと言えます。主な製品として「IBM Watson」や「Google TensorFlow」などが存在しますが、いずれも導入のために辞書データを準備することや蓄積情報を学習させるための投資がかかるため、容易に導入することが難しい点が課題です。

 

(3)高度な自律化
そして最終段階となるのが「高度な自律化」です。この段階では、作業のみならず、問題発見およびプロセスの分析や改善、意思決定までが自動化されます。現在、該当する製品やサービス自体がまだ存在していませんが、ポテンシャルを感じるものは出てきています。

II.次世代に求められるワークスタイルと人材/スキル要件

1.拡大していくAI/RPAの活用領域

労働時間の大幅な短縮やミスの削減を目指して採用が活発化しているRPAは新たな局面を迎えています。「ファーストステップとして、定型業務を小規模な範囲でRPA化していく」というフェーズを経て、RPAが確かな効果があることが認知されてきた昨今では、一定の投資と共に大規模なデジタルレイバー導入にチャレンジしている企業が増えてきています。一気に多くのロボットが導入されることで短期的に期待する効果を創出することができるからです。ただし同時に、新たに数十から数百といった数のデジタルレイバーが誕生することで、それらの管理作業も発生してしまうという側面があります。
国内企業のA社では、これらの管理作業工数の増加を補填すべく、AIの識別・予測技術を使って、もう一歩進んだ取組みに挑戦しています。ここで、RPAとAIによる自動化から自律化へのシナジーの活用を目指した構想事例を紹介します。

 

(1)監視の自律化
1つ目は、デジタルレイバーの性能・稼働状況を監視するヘルスチェックボットの活用です。重要な工程を担う多数のロボットが一斉に稼働している状況下で、デジタルレイバーが期待どおりのパフォーマンスで業務代行ができているのかを人間が監視しなくてはいけないようでは本末転倒となります。ここにも別のデジタルレイバーを配置し、デジタルレイバーのヘルスチェックを進めていきます。また、AIの技術を用いてデジタルレイバーの日々の稼働傾向を学習し、将来的なリスクを予測したうえでプロアクティブに性能低下等をアラートする取組みが検討されています。

 

(2)返答の自律化
2つ目が、ユーザーからの問い合わせへのFAQ(よくある質問)をテキスト(チャット)を使って提示する自動応答プログラム(チャットボット)の活用です。RPAを業務現場に派遣した当初は、ユーザー側に多少の混乱が発生します。その際、ユーザーからの問い合わせをチャットツール上で行い、さらに人間ではなくデジタルレイバーが対応することで工数増加の軽減が期待できます。質問内容をAIが認識し、あらかじめ登録しておいたFAQから適した返答を選択することで、さらに時間が短縮されます。また、AIがこれらの問い合わせ内容を蓄積し傾向を学習していくことで、ヘルプデスクとしての品質向上も可能になります。

 

(3)サービス提供の自律化
最後は大規模投資を回収する手段の1つである、RaaS(Robot as a Service)を提供する人事ボットの設置です。まず、社内にデジタルレイバー専門の人材サービス部門を創設し、企業内の一部署の要件として構築されたデジタルレイバーの集合体を、新たなリソースとして管理していきます。共通性の高い機能を有したデジタルレイバーを活用し、以下社内外の展開を進め
ます。

 

  • 利用料を設定し、グループ内にデジタルレイバーを派遣する
  • デジタルレイバーを社外に派遣、または社外の業務を受託しデジタルレイバーが代行していく

 

この際、AIの技術を活用し、ユーザーの求人要件にマッチしたデジタルレイバーを選定・レコメンドを提示することでアサインメント工数の低減が期待できます。ユーザーのデジタルレイバー採用結果を学習していくことで、より精度の高いマッチングの実現が期待できます(図表2参照)。

図表2 拡大していくAI/RPAの活用領域

図表2 拡大していくAI/RPAの活用領域

出典:KPMG

2.AI/RPA時代に求められる人材/スキル要件

前項で触れた構想事例はロボットを管理するデジタルレイバーを指していました。作業だけではなく管理もロボットでできるとなると、AI/RPAの浸透が進むことで、人間の仕事がさらに奪われていくという懸念を持たれるケースも多いと思われます。それでは、今後どのような人材が求められているのでしょうか。その問いに対し、AI/RPAが普及していく次世代を見据え、新たに必要となる人材の育成やAI/RPAを浸透させていくための必要な人材・スキルについても昨今、検討が進んでいます。
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)主催のコンソーシアムである人工知能技術戦略会議では、AIの普及に伴い必要となる人材像について検討され、以下のような内容で規定しています。

 

AI時代に必要な人材像

  1. 人工知能技術の問題解決力
  2. 人工知能技術の具現化力
  3. 人工知能技術の活用力

 

まず、「人工知能技術の問題解決力」は日々研究が進んでいる、AIに関する様々な知識・汎用的能力を保持した人材を指します。世界各地から発信されるAIの最新のアルゴリズムや利用方法に関する情報を収集・理解し、これまで不可能とされていた領域についてテクノロジーを用いたソリューションを想起・啓蒙する立場にいます。
次に、「人工知能技術の具現化力」はコンピュータサイエンスの知識・プログラミング技術を追究するスキルを指します。この領域では、これまでのオブジェクト指向や回帰分析などの数理処理をベースとしたコンピューティングの知識をもとに、テクニカルな視点から人工知能技術を形にしていく責務を負い
ます。
最後に、「人工知能技術の活用力」は、AIがもたらすビジネスへの貢献をベースに、ビジネスケースを描きます。具体的な社会課題を大局的に把握し、AIを適用する能力を保持していることが必須となるスキルです。

 

  • デジタルレイバーやAIを如何に経営や業務に適用し、活用していくべきか
  • そのためにはどのような処理をデジタルレイバーやAIに保持させるべきか

 

いずれも、前記について考えていくスキルが次世代には求められており、AI/RPAに対抗して仕事を取り合うのではなく、
1つ上の視点でAI/RPAをマネジメント/コントロールしていく立場が求められていくと考えられます。現在不足しているこのスキルを充足させることで市場成長率が年3%増加することが見込まれているため、企業にとっての育成のメリットは大きいと言えます。(図表3参照)。

図表3 『先端IT人材』の将来推計(人)

図表3 『先端IT人材』の将来推計(人)

出典:経済産業省「IT人材最新動向と将来推計に関する調査結果」(平成28年3月)を加工して作成 『先端IT人材』とは、ビッグデータ、IoT、人工知能に携わる人材(同上、p84-218)

3.AI/RPA推進を成功させる組織体

実際にAI/RPAを構築・導入してく現場のプロジェクトではどのようなロール(役割)、または組織体が必要になるのでしょうか。
KPMGでは、デジタルレイバーの実現に貢献すべく、前述の取組みを推進する際に必要なロール・組織体について規定しています(図表4参照)。

図表4 AI/RPA推進を成功させる組織体

図表4 AI/RPA推進を成功させる組織体

出典:KPMG

AI/RPAの構築・導入においても、一般的なシステム開発における組織体と同様に、マネジメントロール層と開発運用ロール層の2階層で構成されます。ただ、開発運用ロール層においては、CoE(Center of Excellence)とTechnology、Businessといった3つの役割特性に分類されることが特徴的と言えます。さらにここで重要となってくるのは、「AI/RPA Architect」の役割です。通常のシステム開発において擁立される「IT Architect」とは異なり、「最先端のAI/RPAテクノロジーや関連プロダクトの研究やグローバルレベルでの情報収集を実施し、プロジェクトにインプット/適用していく」といった責務を担います。日々世界中で研究が進められ、日進月歩で活用価値の高い先端技術が進化し、実用化が推進されていくAI/RPAの情報をいかに迅速にプロジェクトに共有していくか、が重要なキーとなるのです(図表5参照)。

図表5 AI/RPA推進を成功させるロール(役割)

  Role Job Discription
CoE AI/RPA Architect AI/RPA導入の戦略や方針決定、要件定義やベンダー選定、標準化資料やテンプレート、ガイドライン等の検討に寄与。
CoEの内部的なルールやプロセスの検討も実施する。
最先端のAI/RPAテクノロジーや関連プロダクトの研究やグローバルレベルでの情報収集を実施し、プロジェクトにインプットする。
AI/RPA Analyst CoEの内部的なルールやプロセスの検討支援に加え、AI/RPAナレッジ(標準化資料、テンプレート、ガイドライン)の作成とメンテナンスのサポートを行う。(AI/RPA Architectの下位職位)
Technology AI/RPA Admin ロボットの管理を担当。 必要に応じ、AI/RPAベンダーが構築したソリューションに関し、各所からの例外的な要求事項への対応や承認サポート、またそれらコミュニケーションの記録を支援する。
AI/RPA Functional Support 業務機能に関するLevel1問合せ対応を実施。Level2/Level3問合せ先への情報連携を行う。
IT Architect AI/RPA導入に関するテクニカルな全体アーキテクチャ(アプリケーション、インフラ等)を設計する。必要に応じ、効率的な自動化に寄与するアプリケーション統合のコンセプトを検討する。
Infrastructure Support AI/RPAアプリケーションのためのインフラストラクチャの構築を行う。開発環境、テスト環境、本番環境などのサーバや端末へのソフトウェア(開発ツール、ランタイム等)配布やセットアップを担当する。
IT Risk/Security ITリスクの観点からアプリケーションを検証し、必要に応じてセキュリティの問題解決を支援する。
DB Admin AI/RPAに関するデータベースの設計や構築、管理を担当する。
IT Procurement AI/RPAプロジェクトにおける各種契約・調達業務(ソフトウェア、ハードウェア、役務など)を担当する。
Application Manager AI/RPAに関するソフトウェアのインストールやデプロイメント、管理を行う。
Business AI/RPA Champion 業務チームリードを担当。業務チーム内の情報連携やメンバー教育、保守運用のLevel1サポート(1次受け)の運営、コミュニケーション円滑化を推進する。
Business SME 現行の業務プロセスのAI/RPA化に向け、新AI/RPAプロセスの検討とデザインを進める業務スペシャリスト。
AI/RPA Scripter ロボットやスクリプトの作成とテストを推進。進捗状況やAI/RPA化のメリットをCoEに伝達・共有する。
AI/RPA Support AI/RPA Scripterをサポートし、業務ユーザーにロボットを提供する。入出力処理の説明なども実施し、状況報告のデータの収集を進める。(AI/RPA Scripterの下位職位)

出典:KPMG

III.変革の実現に寄与するテクノロジー・ツール

1.進化するAIの実証実験

人工知能学の権威である米未来学者のレイ・カーツワイル氏によると、2030年までに人間のように物事を考えることができるAIが誕生すると予測し、また、2045年までにはシンギュラリティがおこると予測しています。シンギュラリティとは、全人類に匹敵するような超知能ができる時点のことです。AIをはじめとしたデジタル技術の進歩により、生産現場だけではなくホワイトカラーが担ってきた業務においても自動化が可能になってきていますが、はたして現時点ではどのようなことが可能なのでしょうか。
自然言語処理を行う手法の1つである「word2vec」が注目を集めています。word2vecとは、米グーグル社の研究者であるトマス・ミコロフ氏らが提案した自然言語処理の手法です。単語をベクトル化して表現する定量化手法であり、従来のアルゴリズムよりも飛躍的な精度向上を可能とします。簡単に言えば、単語を200?1,000次元のベクトル化し、空間内で単語の関係を表現する手法です。
この手法を活用すると、最大2万文字までの文章を数秒で200?1,000文字に要約することが可能であり、日本語から欧米の言語など幅広い言語に対応し、また、文章内で最も重要な単語やフレーズを選択し、重要性が高いキーワードを抽出することも可能となります。このテクノロジーを活用すると、下記の業務で自動化が可能になると推測できます。

 

  • コールセンターやヘルプデスクにおける質疑応答
  • 人事や経理/調達関連の問い合わせ対応
  • 社内文書などの検索
  • 取材記事や議事録などの作成
  • 本・雑誌・動画・映画などの書きおこし
  • 契約書の確認など

 

これらの取組みは、今後加速度的な速さで様々なテーマに対して実証作業が実施されると推測します。そしてAIは実証段階から実用化段階へと進化し、人が本来すべき付加価値業務を実施できる時間を創出することが可能となります。AIはある機能に特化した高機能な道具です。現段階ではこの道具の本質を正しく理解し、いかに活用するのか、そして何を検証するのかを見極めて、検証作業を実施することがポイントとなります。

IV.ヒューマンリソースが担うべき次世代のコア業務

1.ヒューマンリソースのコア業務の特定

AI/RPAの構築・導入を進める際は、下記の観点で自動化対象を選定することが多いと思われます。


ロボット化対象業務選定の観点

  • 特に時間のかかっている業務
  • 日々反復的に繰り返される定型的な業務
  • 多くの担当者が重複して実行している同一の業務


このアプローチは一義的には間違っているわけではありませんが、ヒアリングなどを通じて上記の観点のみでロボット化対象をあぶりだすことを繰り返していると、結果的に局所的な対応に留まり、AI/RPAが生んだ創出時間を、より有用なコア業務に充当することができなくなってしまう可能性もあります。
AI/RPAが戦略的な企てをもって活用されている状況を目指すには、創出時間の充当先であるコア業務を特定しておくことも重要となります。
そのためには、次頁のアプローチが有効です。


創出時間を充当するコア業務を特定するアプローチ

  • 企業の利益構造を体系化し、各種業務機能へブレイクダウン
  • 各種業務機能別に、全労働時間から詳細業務時間へ分解


企業の利益構造を事業収益と事業費用(コスト)に分け、さらにブレイクダウンしていくことで、「マーケティング&セールス」「経営管理&バックオフィス」「研究開発&製品開発」といった3つの事業区分、また、それらに帰属する各種業務機能(マーケティング、経営管理、研究開発、調達)などとの関連が明確になります。このアプローチを執ることにより、その企業体(クライアント)にとって、下記について、業務機能別の経営へのインパクトが可視化されるのです(図表6参照)。

 

  • どの業務機能がどの程度利益に貢献しているのか
  • どの業務機能がどの程度費用を消費しているのか

図表6 企業の利益構造と各種業務機能の関係

図表6 企業の利益構造と各種業務機能の関係

出典:KPMG

次に、各種業務機能別に、全労働時間から詳細業務時間へ分解していきます。このアプローチを執ることで、定型業務にどれほどの時間を要しているか、また、「コア業務」「他社支援」「一般業務」にはどれほどの時間しか投入できていないのか、といった情報が明確になります。

AI/RPAにより創出される時間をどのコア業務に充当していくべきか鳥瞰的な分析が可能となり、AI/RPA活用計画における意思決定のインプットとなるのです(図表7参照)。

図表7 全労働時間から詳細業務時間への分解

図表7 全労働時間から詳細業務時間への分解

出典:KPMG

V.おわりに

昨今、日本政府をはじめ多くの企業が注力している「働き方改革」はAI/RPAといった先進的な技術の活用を前提とした取組みとして新たなステージを迎えています。企業は「ホワイトカラーに改めて求められる人材・スキル」や「シフトしていくべきコア業務」の可視化・特定に挑戦しています。
KPMGコンサルティングでは、国内外のAI/RPA活用・工夫の先端事例、経営・テクノロジーアドバイザリーの圧倒的知見を基にお客様の次世代の働き方改革を支援します。

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