原産地規則の概要、日本商工会議所の原産地証明書発行審査手続きに関する情報について

日本における関税及び加算税の見直し等、自由貿易協定・経済連携協定およびその他の関税・間接税に関する最新情報をお知らせします。

日本における関税及び加算税の見直し等、自由貿易協定・経済連携協定およびその他の関税・間接税に関する最新情報をお知らせします。

メガFTA最新動向

TPP

2016年2月4日にTPP協定の署名式が行われ、現在各国で協定の発効に向けて国内手続きを進めている段階です。TPP協定では、署名から2年以内(2018年2月3日まで)に参加する12ヵ国(原署名国)のすべてが議会の承認などの国内手続きを完了することにより発効すると規定されています。ただし、2年以内にすべての原署名国での手続きが完了しなかった場合であっても、原署名国のうち6ヵ国以上が国内手続きを完了し、かつ、それらの国のGDPの合計が原署名国GDPの合計の85%以上を占めていれば、署名の日から2年と60日後(2018年4月4日)に協定が発効すると規定されています。もし、2年以内に上記の条件を満たしていなければ、その後上記条件が満たされた日後60日で発効することとされています。

ただし、域内GDPの大部分を占める米国の次期大統領のトランプ氏はTPP離脱を表明しており、今後のTPPの枠組みについては不透明といわざるをえない状況です。

出典:内閣官房ホームページ

日EU・EPA

2016年7月第11回ASEM首脳会合の際に行われた日EU首脳会談において、本年の出来る限り早期の大筋合意に向け、引き続き最大限努力していくことを確認しました。

出典:財務省ホームページ

原産地証明書発行についての商工会議所からの通知について

日本における特定原産地証明書の発行機関である日本商工会議所から、第一種特定原産地証明発給システムを利用する会社に対し、原産性を確認する際の留意事項について、注意喚起をする通知がありました。同所は、ここ数年、生産場所が海外である、もしくは移転した等の理由により、特定原産品ではない物品であるにもかかわらず、第一種特定原産地証明書が受給される事例が発生していることを問題視し、この注意喚起の通知を行いました。

輸入国政府でEPA税率が適用された後に、特定原産品でなかった事実が発覚した場合は、追徴課税だけでなく加算税の対象となるおそれがあります。一般的に原産地証明書に複数の産品が記載されるケースも多くあり、また、このような事案が発生したことにより、原産地証明書への信頼性が損なわれることにもなりかねず、輸入国政府との関係において、今後の円滑な通関手続きに影響が及ぶことを日本商工会議所は懸念しています。

同所は、通知の中で、各経済連携協定の内容に基づき、下記の事項について確認・対応をした上で判定依頼や発給申請等をするよう申請者に対して要望しております。
1)生産場所の確認
2)原産性を明らかにするための資料の保存
3)原産性の定期的な確認

今後、再発防止のため、日本商工会議所の審査が厳しくなることが予想されますので、今後原産地判定依頼・原産地証明発給申請をする場合、より慎重な対応が必要になるものと思われます。

コラム:原産地規則について

貨物を輸入する際に課される関税は、貨物の種類と原産地によって税率が決定します。税率には、国内法で定める基本税率・暫定税率・特恵税率、外国との条約で定められているWTO協定税率・FTA(EPA)協定税率があります。このうち、特恵税率・協定税率・FTA(EPA)税率については、これらの税率を定める法律や条約に定められた原産地規則を満たす物品に対してのみ適用されます。

  1. 原産地規則とは
    一般的に、輸出入取引される貨物の「国籍」を決定するための基準を意味します。農作物や鉱業品のような一次産品や、輸出国の原産品のみで製造された輸出貨物であれば、これらが生産・製造された国が原産地であることは明確であるため、その貨物の原産国の決定は問題になりませんが、自動車やパソコンなどの製造加工品については製造にあたって、海外から輸入した部品も多く使用されることから、原産地をどこにするのかという問題が生じます。そこで、その判断基準として原産地基準が定められています。
  2. 原産地証明書とは
    原産地証明書とは、輸出国の承認機関等が、輸出貨物が原産地基準を満たしその国の原産品であることを証明する文書をいいます。当該貨物に係る輸入通関手続きにおいては、原則として、税率決定の根拠資料として税関に提出することが要求され、さらにその貨物の生産者又は輸出者においてはその原産性を立証するための根拠資料を整備することが求められています。

関税・間接税 Topics

日本:関税及び輸入品に対する内国消費税等に課される加算税の見直しについて(PDF:347kb)
平成28年度関税改正及び平成28年度税制改正により、平成29年度1月1日以降に法定納期限が到来する関税及び輸入品に対する内国消費税等に課される加算税について見直しが行われ、2016年10月31日にその内容に関するリーフレットが税関から発行されました。
出典:税関ホームページ

日本:日本香港間AEO業者の相互認定について(日本語)
平成28年8月23日に、財務省関税局と香港関税物品税庁は、AEO(Authorized Economic Operator:認定事業者)相互承認に係る取決めについて合意に達し、香港において署名を行いました。本取決めは10月31日から実施され、日香港のAEO事業者による輸出入貨物の通関手続の円滑化が一層促進されることとなります。
出典:税関ホームページ

日本:中国・韓国産水酸化カリウムへの不当廉売関税の課税について(日本語)
平成28年8月2日に、大韓民国及び中華人民共和国産水酸化カリウムに対して不当廉売関税を賦課する政令(水酸化カリウムに対して課する暫定的な不当廉売関税に関する政令の一部を改正する政令)が閣議決定されました。
出典:財務省ホームページ

中国:2016年7月、税関の重要政策と最新動向(日本語)
各地域の税関の最新動向、Brexitの中国への影響等中国税関最新動向および重要政策について取りまとめた資料となります。

中国:Managing Trade and Customs in China(英語PDF:1,810kb)
KPMG Chinaが作成した中国通関実務の要点をまとめた資料となります。

中国:加工貿易に関する審査・認可手続の撤廃及び事中・事後の監督・管理体制の導入(日本語)
加工貿易に関する審査・認可手続きの撤廃及び事中・事後の監督・管理体制が導入されます。

 

中国:金融サービス業・増値税免税の適用範囲が拡大(日本語)
不動産業及び建設業、金融業、生活サービス業に対するVAT関連規定を定めた財税[2016]70号通達が2016年6月30日付で公布されました。

 

Trade & Customs Newsletter No.1

執筆者

KPMG税理士法人
関税・間接税サービス
パートナー 梅辻 雅春
パートナー 神津 隆幸

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