「監査法人の組織的な運営に関する原則」(監査法人のガバナンス・コード)の公表について

会計・監査ニュースフラッシュ - 2017年3月31日、金融庁は『「監査法人の組織的な運営に関する原則」(監査法人のガバナンス・コード)』(以下「コード」)を公表しました。

2017年3月31日、金融庁は『「監査法人の組織的な運営に関する原則」(監査法人のガバナンス・コード)』(以下「コード」)を公表しました。

2016年12月15日に、コード(案)を公表し、2017年3月31日まで意見募集を行っており、確定したコードの公表とともに、寄せられた意見の概要とそれに対する回答を公表している。

コード(案)からの実質的な変更点はないことから、次のとおり、コード(案)に寄せられた意見及びその回答に基づき、コードの考え方等について説明する。

ポイント

  • 「監査法人のガバナンス・コード」が確定し、これに併せて、パブリックコメントの概要とそれに対する回答が各原則の解釈を明確化する観点等から公表されている
  • 金融庁では、コードを採用する監査法人を一覧として公表するとしている

I. パブリックコメントに対する回答に基づくコードの考え方

(1)コードの適用(前文)

コードは、大手監査法人における組織的な運営の姿を念頭に策定されており、それ以外の監査法人において自発的に適用されることを妨げるものではなく、被監査会社、株主、その他の資本市場の参加者等において、組織としての監査の品質の確保に向けた取組状況の評価が円滑に行われるための一助となるものである。大手監査法人以外の監査法人においても、その規模・役割等を勘案し、自発的に適用を判断していくものであるとしている。

また、コードは監査法人の組織的な運営に関する原則を規定したものであり、コード自体が、規制・検査・処分等の直接の規準となるものではないとしている。

(2)各原則の解釈の明確化

各原則に対して、解釈を明確化する観点等から、パブリックコメントに対する回答として、次表のような説明が行われている。

 

監査法人が果たすべき役割【原則1】

<指針1-5>
監査法人は、法人の業務における非監査業務(グループ内を含む。)の位置付けについての考え方を明らかにすべきである。

<グループの範囲>

  • 「グループ」には同一ネットワークに加入する日本国内の法人も含まれる。

<非監査業務の位置付けについての考え方の明示>

  • コードの目的は「組織としての監査の品質の確保」にあり、組織としての監査品質の確保といった観点からの非監査業務に対する位置付けについての考え方が明らかにされるべきである。
  • 非監査業務の位置付けとは、非監査業務の与える人材育成などのポジティブな面と利益相反などのネガティブな面の双方を含む考え方や業務に与える影響を意味しており、法人の運営や評判等に与える影響についても考慮する必要がある。
  • 例えば、大手監査法人においては、監査・非監査業務の受嘱の際、監査業務と非監査業務の間のみならず、非監査業務間の利益相反等の防止について、利益相反の局面を具体的に特定し、それに対する対応方針等について、対外的に分かりやすく説明することが考えられる。

 

外部の第三者の知見の活用【原則3】

<指針3-3>
監査法人は、監督・評価機関の構成員に選任された独立性を有する第三者について、例えば以下の業務を行うことが期待されることに留意しつつ、その役割を明らかにすべきである。
(中略)

  • 被監査会社、株主その他の資本市場の参加者等との意見交換への関与

<第三者の役割>

  • 第三者の役割については、その方法、内容等について各監査法人が自ら判断することになる。

<意見交換する株主等>

  • 独立性を有する第三者に期待される役割としての「株主」との意見交換における関与について、どのような「株主」と意見交換するかについては、各法人において判断されるべきものである。

 

業務運営【原則4】

<指針4-4>
監査法人は、被監査会社のCEO・CFO等の経営陣幹部及び監査役等との間で監査上のリスク等について率直かつ深度ある意見交換を尽くすとともに、監査の現場における被監査会社との間での十分な意見交換や議論に留意すべきである。

<指針4-5>
監査法人は、内部及び外部からの通報に関する方針や手続を整備するとともにこれを公表し、伝えられた情報を適切に活用すべきである。その際、通報者が、不利益を被る危険を懸念することがないよう留意すべきである。

<監査リスク等の内容>

  • 「監査上のリスク等」の「等」の具体的な内容としては、企業や事業環境の理解に資する内容や経営方針などが考えられる。

<内部及び外部からの通報に関する方針と手続>

  • 監査法人に、内部及び外部からの通報に関する方針や手続の整備、その取り扱い方針・手続の対外的な公表が必要であることが明記された。

 

透明性の確保【原則5】

<指針5-1>
監査法人は、被監査会社、株主、その他の資本市場の参加者等が評価できるよう、本原則の適用の状況や、会計監査の品質の向上に向けた取組みについて、一般に閲覧可能な文書、例えば「透明性報告書」といった形で、わかりやすく説明すべきである。

<指針5-2>
監査法人は、併せて以下の項目について説明すべきである。

  • 会計監査の品質の持続的な向上に向けた、自ら及び法人の構成員がそれぞれの役割を主体的に果たすためのトップの姿勢
  • 法人の構成員が共通に保持すべき価値観及びそれを実践するための考え方や行動の指針
  • 法人の業務における非監査業務(グループ内を含む)の位置づけについての考え方
  • 経営機関の構成や役割
  • 監督・評価機関の構成や役割。監督・評価機関の構成員に選任された独立性を有する第三者の選任理由、役割及び貢献
  • 監督・評価機関を含め、監査法人が行った、監査品質の向上に向けた取組みの実効性の評価

<開示媒体>

  • 「透明性報告書」の名称はあくまで一例であることが明記された。

<開示内容等>

  • コードで求められる開示内容等については、各監査法人において、被監査会社、株主、その他の資本市場の参加者等が評価できるよう、コードの適用状況や取組みを自らわかりやすく工夫して記載することが重要であり、そうした観点から、コードでは詳細な説明内容等には言及していない。
  • 指針5-2の各項目については、注意的な例示であり、各監査法人の判断により記載すべきものと考えられる。

II. コードを採用する監査法人の公表

コードの公表を受け、金融庁では、コードを採用する監査法人を一覧として公表するとしている。

このページに関連する会計基準

会計基準別に、解説記事やニュースなどの情報を紹介します。

会計・監査ポイント解説速報

お問合せ