第22回 ICGN-IIRCカンファレンス参加報告

第22回 ICGN-IIRCカンファレンス参加報告

未来を拓くコーポレートコミュニケーション - 2016年12月6日から7日にかけて、ロンドンにて国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(ICGN※1)と国際統合報告評議会(IIRC※2)が、初めて共同でカンファレンスを主催し、30市場から400名超の企業や投資家等の参加がありました。

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当該カンファレンスのテーマは、投資家や企業等の資本市場の関係者が、長期的な価値創造を実現するために何をすべきか、というものでした。
2001年に発生した「9・11テロ」、2008年のリーマンショックによる世界的な金融危機等により、経済市場に対して失われた信頼感を取り戻すためには、ESG(環境・社会・ガバナンス)に配慮したサステナブルな企業経営と投資行動が不可欠であり、企業と投資家が長期的な視点にたってコミュニケーションをする重要性もカンファレンスを通じて繰り返し唱えられていました。ESGや知的資産等の非財務的事項は、しばしば英語でpre-financial mattersとも言われますが、このような非財務的事項は、現在は財務的な数値として現われていないものではありますが、中長期の将来的に財務的な価値に繋がっていくことを意味します。たとえば、環境に配慮した経営を行うことにより、その企業は顧客、社会、投資家等から評価され、その結果、企業の収益や利益が伸び、サステナブルな経営が可能となります。
したがって、サステナブルな経済市場を目指すためには、企業は、短期的な財務利益を追求するだけでなく、中長期的な視点をもってESG等の非財務的な事項も経営戦略に取り入れた「統合的思考(integrated thinking)」を実施し、それを投資家に「統合的に報告(integrated reporting)」することより、投資家も長期的な責任ある投資判断が可能になると言えます。日本においては、いまだ、コーポレートガバナンスの議論が、制度や組織設計の在り方に軸足が置かれることが多いですが、カタチから実質への転換のためには、統合的思考が不可欠であるとの指摘が示唆に富むもので
した。
当カンファレンスは、ICGN ChairであるErik Breen氏、および、IIRC ChairであるMervyn King博士による開会の挨拶から始まり、ICGN Lifetime Achievement Award授賞式の後、世界銀行の元、Managing Director & Chief Financial Officer であるBertrand Badre氏からの基調講演がありました。その後、5つのPlenary セッションおよびBreakfastセッションがありました。
当原稿においては、Mervyn King氏のスピーチに加え、いくつかのセッションについて、紹介をさせていただきます。
なお、KPMGは、プラチナムスポンサーとしてAICPA、ACCA、CIMAと共に当カンファレンスに協賛しました。

当該カンファレンスのテーマは、投資家や企業等の資本市場の関係者が、長期的な価値創造を実現するために何をすべきか、というものでした。

2001年に発生した「9・11テロ」、2008年のリーマンショックによる世界的な金融危機等により、経済市場に対して失われた信頼感を取り戻すためには、ESG(環境・社会・ガバナンス)をふまえたサステナブルな企業経営と投資行動が不可欠であり、企業と投資家が長期的な視点にたってコミュニケーションをする重要性がカンファレンスを通じて繰り返し唱えられていました。ESGや知的資産等の非財務的事項は、しばしば英語でpre-financial mattersとも言われます。このような非財務的事項は、現在は財務的な数値として現われていないものではありますが、中長期の将来的に財務的な価値に繋がっていくことを意味します。たとえば、環境に配慮した経営を行うことにより、その企業は顧客、社会、投資家等から評価され、その結果、高い企業価値を作り出すことができ、投資家の信認を受けたサステナブルな経営が可能となっていくのです。

したがって、サステナブルな経済市場を目指すためには、企業は、短期的な財務利益を追求するのみならず、中長期的な視点をもってESG等の非財務的事項も経営戦略に取り入れた「統合的思考(integrated thinking)」を実施し、それを投資家に「統合的に報告(integrated reporting)」することにより、投資家の長期的な責任ある投資判断も可能になると言えます。日本においては、いまだ、コーポレートガバナンスの議論が、制度や組織設計の在り方に軸足が置かれることが多いですが、カタチから実質への転換のためには、統合的思考が不可欠であるとの指摘は示唆に富むものでした。

当カンファレンスは、ICGN ChairであるErik Breen氏、および、IIRC ChairであるMervyn King博士による開会の挨拶から始まり、ICGN Lifetime Achievement Award授賞式の後、世界銀行の元、Managing Director & Chief Financial Officer であるBertrand Badre氏からの基調講演がありました。その後、5つのPlenary セッションおよびHostedセッションがありました。

当原稿においては、Mervyn King氏のスピーチに加え、いくつかのセッションについて、紹介をさせていただきますが、筆者の視点や私見が含んでいることを申し添えます。

なお、KPMGは、プラチナムスポンサーとしてAICPA、ACCA、CIMAと共に当カンファレンスに協賛しました。

 

※1 ICGNの概要:
ロンドンに拠点を置く。より良い資本市場の発展のために、効果的なコーポレートガバナンス基準と投資家のスチュワードシップを後押しすることを目的として、1995年に設立された非営利会員制組織。https://www.icgn.org/

※2 IIRCの概要:
ロンドンに拠点を置く。国際的に合意された統合報告フレームワークの構築を目的として、2010年8月に設立され、2013年12月に国際統合報告フレームワークを公表。現在は、2020年までに世界で統合報告を普及させるべく活動を実施。http://integratedreporting.org/

I. Day 1

1. 開会の挨拶およびICGN Lifetime Achievement Award

ICGN ChairであるErik Breen氏からの開会の挨拶の後、IIRC Chairであり、南アフリカ最高裁判所の前裁判官および上級評議員のMervyn King博士よりスピーチがありました。当該スピーチのなかでキング博士は、現在、企業は「利益」ではなく「価値創造」について話をすべきであり、また、非財務的事項と財務的な成果を統合させることの重要性を強調されました。従来の短期的な利益追求の時代から、サステナブルな価値創造をする時代へ移行をしていることを改めて再確認することが、当カンファレンス開催の目的である旨も述べられました。

博士の主張は、近著「Corporate Value Officer※3」のなかで詳しく述べられています。企業が創造すべき価値について、それぞれが深く考察する時宜が到来しているともいえます。

その後、これまでのキング博士の功績を讃えて、ICGN Lifetime Achievement Awardの授賞式がありました。授賞式においては、キング博士がIIRC Chairとして、業績、ガバナンス、短・中・長期的な戦略、将来の予測等の情報を簡潔に伝える国際統合報告フレームワークの開発において中心的な役割を果たしたこと、南アフリカにおいてはKing Committeeの議長として、南アフリカのコーポレートガバナンス・コードであるKing Reportの公表に主体的にかかわったこと等の経歴が紹介されました。

コーポレートガバナンスの実践において、開示の在り方を検討することは極めて重要であることを再認識できました。

 

※3 Mervyn King with Jill Atkins, 2016 "Chief Value Officer: Accountants Can Save the Planet", Greenleaf Publishing

2. 基調講演

世界銀行の元Managing Director & Chief Financial OfficerであるBertrand Badre氏からの開会の基調講演においては、国連によるMillennium Development Goals※4(MDG)が施行された2000年と比較し、MDGを継承して施行されたSustainable Development Goals※5(SDGs)が公表されるまでの15年間において、デジタル化の発展、人口構造における変化、9・11テロ、世界的な金融危機、気候変動問題、移民問題等、変化の多い時期であった旨が述べられました。そして、この15年間で、資本市場や民主主義の「体制」への信頼が失われたことを指摘しました。そのため、銀行による利益率および財務体質の改善や、機関投資家が直面しているゼロもしくはマイナス金利による年金資産運用問題の解決等は、体制の土台を救うための必須検討課題である旨が指摘されました。

2030年まで施行されるSDGsは、これらの課題を反映しており、どれも長期的な視点に基づいて公的および私的な資源を統合させ、政治的・社会的・経済的な緊張の緩和に向けた努力を目標としています。重要課題は、それぞれの国ごとに異なるものの、長期的視点をもって解決すべきであること、また、透明性をもって状況を報告すべきであることは共通課題であり、そのために、統合的思考、統合報告そして適切なコーポレートガバナンスの重要性を改めて強調し、スピーチを絞められました。

資本市場への信頼の再構築という世界的な課題に対し、公的機関と民間組織、そして市場が協業することが、これまで以上に求められているといえると考えます。

 

※4 http://www.un.org/millenniumgoals/

※5 http://www.un.org/sustainabledevelopment/sustainable-development-goals/

3. Plenary 1: Aligning the capital market system for 21st century needs

<ファシリテーター>
UNEPFI, Co-chair, David Pitt-Watson氏

<パネリスト>
シンガポール証券取引所, Director, Jane Diplock氏
CalSTRS, Chief Executive Officer, Jack Ehnes氏
United Utilities, Chief Financial Officer, Russ Houlden氏
PRI, Managing Director, Fiona Reynolds氏


当該セッションは、長期的成長のために資本市場関係者は何ができるのか、資本市場が適切に機能するために投資家、企業、政府は、どのような役割を果たすべきか、現代の問題点は何であり、どのように解決すべきか、をテーマに論じられていました。

 

当該セッションにおいては、世界的金融危機やBrexit等による資本市場や企業(特に金融業界)に対する失望感、孤立感、不信感等が募っている状況が改めて指摘され、失われた信頼を取り戻す1つの方法として、IIRCが指示している、透明性のある報告の重要性が挙げられていました。また、資本市場や企業への信頼の再構築のために、規制当局は、ESG事項を考慮したルール作りの検討をすべきであり、投資家は、受益者に配慮した長期的観点からの受託責任をより強く持つ必要があるとの指摘もありました。

さらに、企業、政府、アセットマネジャー、アセットオーナーは、それぞれにおいて、果たすべき役割があり、具体的には、企業は、統合的思考に基づいた統合報告の重要性を認識し、政府は、政治的利害とは独立した観点から時代の課題を洗い出し、インパクト・アセスメントをしたうえで、規制を施行すべきだとしていました。そして、アセットマネジャーには、その報酬が長期的な成果と結びつくようにされるべきであり、アセットオーナーは、アセットマネジャーのより徹底した管理をし、報酬と成果のモニタリングをすべきであると、述べるパネリストもいました。

II. Day 2

1. Hosted session: Building credibility and trust around corporate reporting innovations(hosted by CAQ)

<ファシリテーター>
CS International, Director, Anne Molyneux氏

<パネリスト>
Schroders, Global Head of Stewardship, Jessica Ground氏
Sustainability Accounting Standards Board( SASB), Director of Capital Markets Policy & Outreach, Janine Guillot氏
GRI, Interim Chief Executive, Eric Hespenheide氏


今日の投資家は財務諸表のみならず、非財務の開示事項をも利用して投資判断を行っているなかで、そのニーズに対応するために、企業の報告形態は進化を続けています。投資家や基準設定団体は、企業が公表している非財務的事項にどれだけの信頼性があると考えているのか、どのようにすれば非財務的事項の信頼性が高まるのか、について当該セッションで議論がなされました。

 

投資家の立場から見ると、企業のESG情報開示に満足している投資家が少ないこと、企業の報告書が長すぎること、そして、多数の企業報告基準があるため企業報告が複雑になり、企業側の負荷が増した結果、雛形的な説明が多くなっている問題点の指摘がありました。したがって、非財務的事項の保証よりも、企業報告の簡潔化と、同一の報告内に開示されているKPIを一貫させることのほうが大事である旨の発言が投資家のパネリストからありました。

数値化できない事項については、ナラティブで説明するより他ないため、レポートが、ある程度長くなることは避けられない部分もありますが、ナラティブな開示事項は、企業の強力な内部統制のもと、取締役会がオーソライズしたものであれば、さらなる保証は不要であるとの考えが投資家のパネリストより強調されていたのが印象的でした。

その他、非財務的事項の開示に関する課題の1つとして、マテリアルな非財務的事項の特定が挙げられました。マテリアルな非財務的事項は、一義的には報告企業が決定すべきものであるが、読み手側においても、客観的な立場でその妥当性を判断する必要があるとの指摘もありました。特に、多くの企業が多角的に事業を営んでいる現状においては、マテリアルな非財務的事項の決定には、より複雑性が増しており、引き続き検討すべき課題であることも述べられました。

マテリアルな課題の認識は、企業の経営の意思決定、資源配分、さらには情報開示方針の決定づけるものです。統合的思考の根幹ともいえるプロセスであり、日本においても、今後、関係者間の議論の深化が進んでいくことが求められていると思いました。

2. Plenary 2: Building multi-capital business models for future value

<ファシリテーター>
Newton Investment Management, Chief Executive Officer, Helena Morrissey氏

<パネリスト>
Itau Unibanco, Group Finance Director, Alexsandro Broedel Lopes氏
Interserve Plc, Group Financial Director & Head of Sustainability, Tim Haywood氏
SAP, Chief Financial Executive, Luka Mucic氏
Eisai Co., Ltd., Chief Financial Officer, Ryohei Yanagi博士


当該セッションは、国際化されている資本市場において、現在、環境問題、技術革新、人口問題等の新たな課題があるなかで、企業が持続可能なビジネスモデルを確立するために、これらは、どのように影響するのか、そして、投資家がこのような課題の将来的な影響を判断するために、どのような情報が必要なのかについて検討することがテーマでした。

 

このセッションにおいて、特に印象的であったのは、「長期的な視点を持ち、社会へ貢献しながらビジネスを実施していくことが、企業にとっても長期的な価値を生み出す」事例として、日本の医薬品メーカーであるエーザイにおいて実施した社会貢献活動に関する柳氏のご説明でした。具体的には、リンパ系フィラリア症という熱帯病を抑制する薬をWHOに無償提供し、WHOを通じて当該熱帯病が蔓延している貧困国に配布するというものでした。これは、開発途上国や新興国における医療品へのアクセスを改善し、その国全体の将来成長のための長期的投資がエーザイにおいて重要事項として位置づけられているとのことでした。

また、企業の持続可能性にとって、多様化された人的資本、将来の収益に貢献する知的資本、顧客や仕入先等との関係資本の強化など、財務的資本のみならず、非財務的資本をも考慮したホリスティック(全体的)な視点での経営が必須である旨も強調されていました。そして、利益追求と社会貢献等の価値創造は両立可能であり、企業が持続的に存在するためには、すべてのステークホルダーと良い関係性を築くことが重要であるという指摘もありました。

会場からの質問の中には、「倫理を価値創造にどのようにして組み込んでいくか」というものもあり、それに対して、「人的資本や関係資本の強化には、会社の倫理観は重要な役割を持ち、短期的な利益を追求するために、非倫理的な行動をとる企業は、長期的に存続することは困難な時代である」とパネリストから回答がありました。

社会的な課題の解決とビジネスの成果が一体化したビジネスストーリーの構築が不可欠であることを再認識しました。

3. Hosted session: Non-GAAP measures that support investor insight(hosted by KPMG)

<ファシリテーター>
KPMG Global Lead Partner & Head of Audit for International Markets and Government, Paul Korolkiewicz氏

<パネリスト>
Legal & General Investment Management, Corporate Governance Manager, Jeanette Andrews氏
Smith & Nephew & Michael Kors Holdings Ltd., Non-Executive Director, Robin Freestone氏
CFA Institute Global, Interim Head Financial Reporting Policy, Vincent Papa氏
KPMG International, Partner DPP Accounting and Research, David Littleford氏


カンファレンス2日目に、当カンファレンスのスポンサーのうち、5社がPlenaryセッションとは別に独自のセッションを開催し、KPMGもスポンサー団体の1つとして、セッションを開催しました。

KPMGのセッションにおいては、Non-GAAP指標の関連性と信頼性の確保はどのようにすべきか、そして、どのようにすれば投資家も満足するレベルのNon-GAAP指標を開示することができるのか、について議論がなされました。

当該セッションにおいて、以下の事項がパネリストから挙げられました。

  • 指摘された事項としては、GAAP数値からNon-GAAP指標への調整項目(たとえば、吸収合併前の収益等)や、その指標を採用している理由が適切に説明されていないため、投資家が分かりやすいように説明してほしい
  • Non-GAAP指標の算出の際に毎期継続的に同一の計算方法が利用されていないこともあるため、計算方法の継続性を希望する(CEOが交替するたびに指標が変わってしまうような企業も見受けられる)
  • 開示されているNon-GAAP指標が事業に必ずしも関連性がないものがある
  • 投資家のNon-GAAP指標への関心が高まっている傾向にあるため、できればNon-GAAP指標についても一定の保証が欲しい、もしくは監査報告書のKey Audit Matterとして意見表明して欲しい
  • Non-GAAP指標の開示決定プロセスを説明してほしい
  • Non-GAAP指標に取締役が責任を持っていることの裏付けとして、Non-GAAP指標と役員報酬を関連付けるべきではないか
  • Non-GAAP指標は、会計領域のテクニカルな問題ではなく、企業のポリシー、考え方の問題であるため、アニュアルレポート等において、レポート全体で一貫性を持った説明がなされるべきである

以上のように、Non-GAAP指標の開示には課題がいくつか残っている状況ですが、パネリストが強調していたのは、情報を増やすのではなく、情報をもっと分かりやすく説明してほしいということでした。

4. Plenary 5: How can our corporate reporting infrastructure support effective decision-making for the short, medium and longer-term?

<ファシリテーター>
World Economic Forum, Member of the Managing Board, Richard Samans氏

<パネリスト>
Corporate Reporting Dialogue, Chair, Huguette Labelle氏
PwC, Head of Regulatory Affairs, Gilly Lord氏
Hermes, Chief Executive Officer, Saker Nusseibei氏
IASB, Chair Board of Trustees, Michel Prada氏


当該セッションは、価値創造に関する企業報告において、企業や投資家は複数のフレームワークや基準、ガバナンスコードやスチュワードシップ・コードを用いている状況にあります。このようななかで、短期・中期・長期的な資源配分を適切に判断するために必要な情報を効果的に入手し、共通認識に基づいた企業報告システムを確立するためには何が必要なのか、について議論がなされました。

 

このパネル・ディスカッションの中において、現在の企業報告が様々なステークホルダーにとって理解しづらいものであり、最新技術が利用されておらず、情報の所有者は企業ではなく、ステークホルダーに属すべきものであることの認識を企業側が必ずしも持っていないとの指摘がありました。この指摘に対して、IASBのPrada氏は、基準設定側として、重要な情報を提供しつつも情報過多にならない報告基準の設定・改定は今後の課題だと述べていました。そして、企業報告制度は、企業の長期的価値創造を説明するものである必要があるとの認識が改めて共有されました。

情報開示は、これまでコンプライアンスの視点から議論されることが多いですが、外部とのコミュニケーションに資するという立場からの展開が、まさに時代の要請に応えることだと思いました。

III. おわりに

1日半に渡る、多くの著名な方々による密度の濃いカンファレンスでしたが、繰り返し出た言葉やテーマには共通するものがありました。統合的思考、マテリアリティ、サステナビリティ、レスポンシビリティ、をキーワードとして挙げておきます。

資本市場への信頼を取り戻すためには、企業は目先の財務利益を追求するだけでなく、環境や社会問題の解決をも考慮した中長期的経営戦略を策定できるようなガバナンス体制を構築することが、その企業の持続的存続に繋がっていく時代に変化しつつあります。そのうえで、企業は、報告書に財務的事項のみならず、環境、社会に配慮した中長期経営戦略や、それを実現するためのガバナンス体制を投資家に適切に説明することが必須となります。なぜなら投資家も、長期的投資判断をする際に、企業のESG事項への取組みに対する理解が不可欠だからです。ESG事項に関する取組みの説明のためには、報告書を長くするのではなく、キーとなる事項を企業が自ら選定したうえで、簡潔に分かりやすい報告が、価値の実現に繋がっていきます。

その意味で実効性のあるコーポレートガバナンスと投資家のスチュワードシップ精神の向上をめざすICGNと、企業の財務的情報と非財務的情報の双方を使って中長期的な戦略を簡潔に分かりやすく伝える媒体の1つである国際統合報告フレームワークを構築・普及しているIIRCの共同カンファレンスは、まさに、今の時代、資本市場関係者のすべてが検討すべき重要課題を再認識させる場を提供するにふさわしいものでした。

執筆者

KPMGジャパン
統合報告アドバイザリーグループ
パートナー 高橋 範江

未来を拓くコーポレートコミュニケーション

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