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KPMGフォーラム2015 - IoT時代の経営イノベーション 講演報告【パネルディスカッション】成長戦略を支えるIFRS - その最新動向を探る

講演報告 成長戦略を支えるIFRS - その最新動向を探る

KPMGジャパン開催「KPMGフォーラム2015 - IoT時代の経営イノベーション」は、企業の皆様が日々向き合われている課題の解決に向けて、さらに、将来の新しい時代を切り開く付加価値の高い情報提供をすべく14年目を迎えています。

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わが国における政官民の各界の取組みによりIFRS任意適用会社が急速に増え、導入表明企業も含めると100社を超えるまでになってきている現状を踏まえ、名古屋大学の角ヶ谷典幸教授より「日本におけるIFRS適用を巡る見解の多様性」について、2009年公表の中間報告以来、各界の代表者がどのような根拠で、いかなる立場で表明してきたか定量分析等を交えてご講演頂きました。続いて、IFRSを日本に導入するにあたり、企業会計基準委員会(ASBJ)委員として先導的役割を果たされ、また、東海地区でいち早く「グローバルメガサプライヤー」への成長に向けた経営革新運動としてIFRSを導入された住友理工株式会社の西村義明会長より「IFRSの取組み、メリット、課題等」についてご講演頂きました。最後に、IASB元理事であずさ監査法人の山田辰己を交えて、講演内容をを深堀する形で、IFRSの現状・将来について、パネルディスカッションが行われました。

KPMGジャパンは、去る2015年11月26日、27日 東京ミッドタウン、12月4日 ミッドランドホール(名古屋)、12月7日 ホテルニューオータニ大阪において、「KPMGフォーラム2015 - IoT時代の経営イノベーション」を開催しました。

本フォーラムは、企業の皆様が日々向き合われている課題の解決に向けて、さらに、将来の新しい時代を切り開く付加価値の高い情報提供をすべく14年目を迎えています。

名古屋会場では、わが国における政官民の各界の取組みによりIFRS任意適用会社が急速に増え、導入表明企業も含めると100社を超えるまでになってきている現状を踏まえ、「成長戦略を支えるIFRS - その最新動向を探る」と題しまして、パネルディスカッションを開催しました。

まず、名古屋大学の角ヶ谷典幸教授より、日本におけるIFRS適用を巡る見解の多様性について、2009年公表の中間報告以来、各界の代表者がどのような根拠で、いかなる立場を表明してきたか、定量分析等を交えてご講演頂きました。

続いて、IFRSを日本に導入するにあたり、企業会計基準委員会(ASBJ)委員として先導的役割を果たされ、また、東海地区でいち早く「グローバルメガサプライヤー」への成長に向けた経営革新運動としてIFRSを導入された住友理工株式会社の西村義明会長より、その取組み、メリット、課題等をご講演頂きました。

その後、IASB元理事であずさ監査法人の山田辰己を交えて、角ヶ谷氏、西村氏の講演をさらに深掘りする形で、IFRSの現状・将来について、パネルディスカッションが行われました。

本稿では、外部の有識者の方々を交えた講演内容を広くお伝えするため、概要をKPMGジャパンがご紹介します。

I. 日本におけるIFRS適用を巡る見解の多様性

名古屋大学 大学院経済学研究科 教授
角ヶ谷 典幸 氏

1. IFRS適用を巡る議論の変遷

角ヶ谷氏は、冒頭、日本では2010年3月期からIFRSの任意適用が始まるものの、IFRSに代替しうるフルセットの会計基準(J-GAAP、JMIS)を現在でも維持・開発しており、財務報告のコンバージェンスをより慎重に進めている現状と、2009年の中間報告、2012年の中間的論点整理、2013年の当面の方針の3つの報告書による任意適用、強制適用、連結と個別の関係等の議論の変遷を説明されました。

2. 日本におけるIFRS適用をめぐる見解の多様性

続いて角ヶ谷氏は、ASBJの審議内容を定量分析した結果、まず、会計研究者、財務諸表作成者(製造業からの代表者等)は、JICPAからの代表者、財務諸表利用者(アナリスト等)に比べて、IFRSの強制適用に反対する割合が高い傾向にあること、次に2009年の中間報告以降はIFRSの強制適用に反対する割合が高い傾向にあること、最後に各界の代表者ごとに用いられたロジックは異なりIFRS強制適用反対派はローカルな視点からより慎重なコンバージェンス・アプローチを支持し、IFRS強制適用賛成派はグローバルな視点から直接適用アプローチを支持している傾向にあることの3点を指摘されました。

II. グローバルサプライヤーへの成長に向けた経営革新運動としてIFRS導入

住友理工株式会社 代表取締役会長 兼 CEO
西村 義明 氏

1. IFRS導入の目的と背景

西村氏は、住友理工グループがIFRSを導入した背景として、複数国の同業他社を同一基準の財務諸表で比較したいという投資家のニーズがあったこと、グローバル化のためのM&Aの実施により海外連結子会社の多くがIFRS適用であったこと、グループの経営管理上、原価計算基準や会計基準の不統一、決算期のズレ、連結ベースの業績評価が不十分であったことを挙げ、全世界ベースで基準を統一しIFRS導入を好機として、グローバルメガサプライヤーをめざして経営のグローバル化を図ること(経営革新運動)を目的とされたことを説明されました。

2. IFRS導入プロジェクト

西村氏は、IFRS導入プロジェクトでは業務プロセス・システムの変更が必要となるため、経理部門だけでなく、全事業部および子会社を含めた全社プロジェクトと位置付けて2010年10月に構築を開始し、2016年3月期の第一四半期からIFRS適用開始するまでの対応方針、導入スケジュール、会計方針の変更・決算期統一についての概要を説明されました。

3. IFRS導入のメリットと課題

西村氏は、IFRS導入のメリットとして、親子間における会計処理の認識の齟齬がなくなること、会計基準を全世界ベースで統一することによりグローバルで経営管理を強化・効率化できること、さらにIFRS適用により財務諸表の国際比較が容易となるため機関投資家のニーズに対応可能となることの3点を挙げられました。

一方、IFRSの課題として、会計の観点からはOCIのノンリサイクリングにつき企業の業績は最終的にキャッシュ・フローに帰着する点を、経営の観点からはのれんの非償却につきいかなるビジネスモデルも必ず陳腐化するため定額償却と減損の組合せが恣意性の排除からもベターである点を、最後に開示上の観点からは特殊損益と経常損益が営業損益に混在し、事業実態が見えないことから、より丁寧な開示を考えるべきである点の3点について言及されました。

また、IFRSをより適正なものとするため、ASBJが行ってきたような日本からの継続的な意見発信が非常に重要であることも強調されました。

III. パネルディスカッション IFRSの現状と将来

名古屋大学 大学院経済学研究科 教授
角ヶ谷 典幸 氏

 ×

住友理工株式会社 代表取締役会長 兼 CEO
西村 義明 氏

 ×

IASB元理事
有限責任 あずさ監査法人 パートナー 公認会計士
山田 辰己

 

名古屋会場では、角ヶ谷氏と西村氏の講演をさらに深堀りする形で、IASB元理事・あずさ監査法人 山田辰巳パートナーの司会で、IFRSの現状と将来についてパネルディスカッションが行われました。

1. 企業会計基準委員会(ASBJ)の機能

西村氏は、ASBJにおいてIFRS適用を巡る多様な見解があるなかで、会計基準は統一されるべきであり、その機能をIFRSとどのように関わり、高品質な会計基準に近づけていくか、その上で、エンドースメント手続、任意適用を着実に行うことが重要であると指摘されました。

2. IFRS適用のメリット

西村氏のIFRS適用のメリットは、講演II3. IFRS導入のメリットと課題で説明されました。

角ヶ谷氏は、海外市場での資金調達、国際的な比較可能性以外に、IFRS適用に伴う調整表の分析を通じて、移行に伴う資産、利益増加がコストを上回っている点を指摘されました。

3. IFRS適用のハードル

西村氏は、IFRS適用の懸念につき、対応できる人材、相応の期間とコストを挙げられました。また、IFRSが製造業に合わないのではなく、OCIのノンリサイクリング、のれんの非償却、営業損益に特殊損益と経常損益が混在している点が課題である点を、企業結合の例などを挙げて再度強調されました。

続いて角ヶ谷氏は、アメリカと日本が世界で全面適用が遅れている理由として、制度的に代替される会計基準があることを挙げた上で、連単分離、任意適用であるならばIFRSを適用しても問題ないと意見を述べられました。

4. IFRSの導入準備について

西村氏は、IFRS導入を単に会計問題として捉えず、事業戦略として名古屋の一部品メーカーからグローバルメガサプライヤーへ成長するための経営改革運動としたことを強調されました。また準備期間については、様々な要因もあって日本基準内で可能な項目を先行適用していたものの、もう少し短期間で導入できた可能性があったとも話されました。

5. IFRSのグループ経営への役立ち

西村氏は、IFRS導入により基準が統一されることで世界的なグループ経営が見えてくると述べられました。

また角ヶ谷氏は、IFRSに関する大学での教育には、日本基準を中心にして、IFRSは日本基準との差異が大きい項目のみを学習する方法と、はじめからIFRSの基準書を学習する方法があり、両方法論の強みを活かして人材育成することが大事であると意見を述べられました。


IFRS適用をめぐる議論の経緯と見解の多様性、先行適用企業の導入目的、メリット、課題、そして成長戦略を支えるうえでIFRSをどのように活用していくべきかについてのディスカッションは、今後の企業経営を担う多くのご参加者にとって、大変興味深く有意義なものでした。

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