独立企業間価格算定方法のうち、取引の価格を直接比較する独立価格比準法、売上総利益率に基づき算定された価格を比較する再販売価格基準法及び売上原価総利益率(コストマークアップ率)に基づき算定された価格を比較する原価基準法の3つの方法を総称して基本三法という。
基本三法(特に独立価格比準法)は、独立企業間価格を直接的に算定することができるという長所を有している。独立企業間価格の算定にあたり、各算定方法の適用に際して要求される比較対象として適切な比較対象取引を選定できる場合には、それぞれの長所を考慮したうえで、事案に応じて最も適切な方法を選定する必要がある。なお、2011年度税制改正により、独立企業間価格算定方法の適用優先順位(基本三法優先)は廃止されており、基本三法、取引単位営業利益法、利益分割法、2019年度税制改正により追加されたディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法※1)の6つの独立企業間価格算定方法から「最も適切な方法」を事案に応じて選定し、適用する仕組に移行している(最適方法ルール)。
※1 DCF法については、無形資産の評価にて詳細に記述されている。
独立価格比準法はCUP法(Comparable Uncontrolled Price Method)とも呼ばれるが、検証対象となる関連者間取引で用いられている価格と、比較対象となり得るほどの類似性を有する非関連者間取引(比較対象取引)で用いられている価格とを直接的に比較する独立企業間価格算定方法である。
独立企業間価格 =
比較対象取引(第三者間取引又は企業と第三者との間の取引)の対価の額
再販売価格基準法はRP法(Resale Price Method)とも呼ばれるが、検証対象となる関連者間取引と比較対象取引における再販売に係る売上総利益率を比較して、検証対象取引が独立企業原則を満たしているか否かを検証する独立企業間価格算定方法である。
独立企業間価格 =
国外関連取引に係る棚卸資産の買手が第三者に対して販売した対価の額 - 比較対象取引(第三者間取引又は企業と第三者との間の取引)に係る売上総利益の額
原価基準法はCP法(Cost Plus Method)とも呼ばれるが、検証対象となる関連者間取引と比較対象取引における売上原価に対する売上総利益率(コストマークアップ率)を比較して、検証対象取引が独立企業原則を満たしているか否かを検証する独立企業間価格算定方法である。
独立企業間価格 =
国外関連取引に係る棚卸資産の売手における購入、製造等による取得原価の額 + 比較対象取引(第三者間取引又は企業と第三者との間の取引)に係る売上総利益の額
基本三法の適用を検討する上で、比較対象取引の選定に当たって検討すべき諸要素として、租税特別措置法通達66-4(3)-2及び66-4(3)-3において以下の項目が挙げられている。
同種又は類似の棚卸資産の取引であること
同様の状況の下で行われた取引であること
CUP法を適用するに当たっては、棚卸資産の性状、構造、機能等の高い比較可能性を有する同種の棚卸資産であり、かつ同様の状況下で行われている必要がある。
一方で、RP法及びCP法に関しては、CUP法と比べると、求められる比較可能性の要件が緩やかであり、類似の棚卸資産である場合において適用可能である(なお検証対象取引と同様の状況下で行われている必要がある)。しかしながら、RP法及びCP法で求められる比較可能性の要件は、取引単位営業利益法(TNMM)より厳格である点に留意する必要がある。
十分な比較可能性を持つためには、比較対象会社との差異調整が必要となる。規定上必要な差異調整は、租税特別措置法通達66-4(4)-3、66-4(4)-4及び66-4(4)-5において以下の項目が挙げられている。
為替差損益
値引き、割戻し等の取扱い
会計処理方法の差異の取扱い
なお、2019年度税制改正において、差異調整に関して定量的に把握することが困難な差異があるために必要な調整を加えることができない場合であっても、影響が軽微と認められるときには、統計的手法(いわゆる四分位法)(※)を用いることができることとされた。
(※)四分位法参照
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