調査の結果、首位がノルウェー、次いで英国、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、フランスと続き、欧州6ヵ国が明らかにリードしています。これらの国はすでに大幅な排出量削減を実現しており、それぞれの国がネットゼロの達成時期を公表しています。各国は自国の目標を達成するための革新的な方法を検討していますが、どの国も解決すべき大きな課題を抱えています。

主な調査結果

  • 各国によるネットゼロ目標の採択と法制化に遅れ
  • グローバル・ネットゼロという野心に潜む実現能力の不足という弱点
  • 国の準備度合は概してセクターの準備度合に反映されている
  • ネットゼロ達成の準備度合は繁栄と関連がある

KPMGの洞察

ネットゼロ達成の鍵は、世論と国民の行動変容を支えとして、公共セクター、民間セクター、金融セクターが協力することにあります。KPMGの洞察は以下のとおりです。

  1. ネットゼロ目標の設定は最初の一歩にすぎない
  2. 各国政府は、ネットゼロを実現するために金融市場の力を上手に利用する必要がある
  3. 企業に対する報告義務の導入は、ネットゼロへの移行を加速させる
  4. あらゆるレベルの政治的同盟・協力は影響力を持つ
  5. 気候変動対策について国民の支持を取り付けることを、政府の重点課題にするべき
  6. 地政学的緊張の継続は、ネットゼロの実現に向けた各国の取組みを、協力ではなく気候変動競争の場に変える可能性がある

グローバルセクターの概要

電力と熱生産

電力ならびに熱生産セクターの脱炭素化に関しては数ヵ国で進展が見られますが、NZRIに含まれる他のセクターに比べて、かなりばらつきがあります。NZRIの構成国ではすでにほぼ100%、また、2019年時点で世界の全人口の90%が電力にアクセスできるようになっており、再生可能エネルギー、エネルギーネットワークおよびレジリエンスといった分野に投資を増やせる環境にあります。クリーンエネルギー関連プロジェクトの支援に対する投資家の意欲は旺盛で、各国政府は支援メカニズムを提供し続けるとともに、プロジェクト案件を増やす必要があります。

運輸

運輸セクターにおける脱炭素化競争ではいくつかの国が先頭を走っていますが、大半の国は内燃機関を使用した車の販売を禁止する期日をまだ設定しておらず、この措置の政治的・経済的影響に苦慮していることがNZRIから読み取れます。NZRIの調査は、国内旅行に鉄道を利用する割合が低いこと、また、電気自動車の導入が十分でないことも明らかにしています。後者は、政府のインセンティブの不足や充電インフラの整備遅れによるものです。

建築

建築セクターは、脱炭素化準備度合における各国間のばらつきが比較的小さいセクターです。これは、建築物の省エネルギー性能に対する一貫した政策対応と、環境配慮型建築物の普及を後押しする継続的な取組みによるものです。NZRIの対象国は、平均すると、既存の建築物の改修よりも新築の省エネ建築物に対する施策で成果を挙げています。全体的に見て、建築物の脱炭素化に向けた取組みは不十分に見えます。この背景には、異常気象現象による電力需要の増大と、建築セクター全体のエネルギー消費の伸びがあります。

産業

産業セクターは、脱炭素化の進捗状況、政府の行動、実現能力のすべてにおいて、32ヵ国のばらつきが最も大きいセクターです。産業セクターの直接排出量は2021年以来、横這いの状態ですが、非エネルギー集約型産業で若干減少しています。NZRIは、産業セクターに関して、クリーンテクノロジー市場が未成熟である、脱炭素化技術の特許数が少ない、開発中の低炭素産業クラスターを有している国が9ヵ国にすぎないなど、実現能力がいまだに低い状況にあると警告しています。

農業・土地利用・林業

NZRI対象国の大多数は食品ロスに対して強い政策対応をしていますが、小売・消費者レベルでいまだにエンドユーザーの廃棄がかなり多いことをデータが示しています。気候変動を意識した食生活を促すには政府の介入が必要であるにもかかわらず、どの政府も炭素集約型食品に対する課税を行っていません。農業での土地利用効率は極めて低く、研究開発への投資の不十分さやクリーンテクノロジー市場の未発達を反映しています。生産性と効率を持続可能な形で高めるためには、この領域の技術革新が不可欠です。同様に、世界の森林を保護するために行うべきことがまだあります。長期的管理下に置かれている保護区にある森林の比率は比較的低いままであり、持続可能な管理を強化するための措置である森林認証が十分活用されていません。

日本に関する調査結果

日本はNZRIの総合7位、セクターの準備度合が4位、国の準備度合が8位となっています。水素サプライチェーンやグリーンビルディングなどの技術開発の面で非常に優れていますが、化石燃料融資への依存度、再生可能エネルギー開発の停滞、原子力発電への否定的な国民感情などの課題を抱えています。

 

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