日本基準オンライン基礎講座 収益認識に関する会計基準

収益認識に関する会計基準について音声解説付きスライドにより分かりやすく解説します。

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チャプター別動画

解説文付きスライド

※2020年3月31日時点で公表されている基準等に基づき解説しています。

内容

Part1

  • 収益認識の5つのステップ
  • STEP1 契約の識別
  • STEP1 契約の結合
  • STEP2 履行義務の識別

Part2

  • STEP3 取引価格の算定
  • STEP3 変動対価
  • STEP3 重要な金融要素
  • STEP4 取引価格の履行義務への配分
  • STEP4 独立販売価格の見積り方法

Part3

  • STEP5 収益の認識
  • STEP5 履行義務の充足
  • STEP5 一定の期間にわたり充足される場合
  • STEP5 一時点で充足される場合

Part4

  • 収益認識に関する適用指針
  • 総額表示と純額表示
  • 本人・代理人の判定

Part1

収益認識の5つのステップ

顧客との契約から生じる収益は、5つのステップを適用して認識されます。

ステップ1では、顧客との契約を識別します。
ステップ2では、契約における履行義務を識別します。
ステップ3では、契約の取引価格を算定します。
ステップ4では、ステップ3で算定した取引価格を、ステップ2で識別した履行義務に配分します。
ステップ5では、履行義務を充足したとき、または、充足するにつれて、収益を認識します。

日本基準オンライン基礎講座 収益認識01

ステップ1、ステップ2では、収益の会計単位を決定し、
ステップ3、ステップ4では、収益を「いくらで」計上するか、
ステップ5では、収益を「いつ・どのように」計上するかを決定します。

各ステップについて、これから詳しく解説していきます。

本会計基準の適用対象は、財またはサービスの移転を約束する顧客との契約です。

STEP1 契約の識別

ステップ1では、まず、顧客との契約を識別します。

ここで、契約とは、法的な強制力のある権利及び義務を生じさせる複数の当事者間における取決めをいい、次の要件を全て満たすものをいいます。

1つ目は、当事者が、書面、口頭等により契約を承認し、それぞれ義務の履行を約束している
2つ目は、移転される財・サービスに関する各当事者の権利を識別できる
3つ目は、移転される財・サービスの支払条件を識別できる
4つ目は、契約に経済的実質がある
5つ目は、財・サービスと交換に企業が権利を得ることとなる対価を回収する可能性が高い

これらの要件を全て満たす場合には、契約を識別します。

STEP1 契約の結合

本会計基準は、通常、契約単位で適用されます。

ただし、同一の顧客またはその関連当事者と、同時またはほぼ同時に締結された複数の契約について、

同一の商業的目的を有するものとして交渉されている、
1つの契約で支払われる対価の金額が、他の契約の価格または履行の影響を受ける、
1つの会計単位とすることが適切である、

といういずれかの要件を満たす場合には、企業はこれら複数の契約を統合して、単一の契約として取り扱います。

STEP2 履行義務の識別

次に、ステップ2では、ステップ1で識別した契約に含まれる、履行義務を識別します。

履行義務とは、顧客との契約において、財・サービスを顧客に移転する約束をいいます。

日本基準オンライン基礎講座 収益認識02

契約のなかには、複数の履行義務が含まれる場合があります。

契約の中に複数の履行義務が含まれるかどうかは、財・サービスが別個のものかどうかで判断します。

財・サービスが別個のものであるとは、

  • 顧客が財・サービスからの便益を、それ単独で、または顧客にとって容易に利用可能な他の資源と組み合わせて得ることができる
  • 財・サービスを顧客に移転するという企業の約束が、契約における他の約束と区分して識別できる

この2つをいずれも満たす場合には、財・サービスは別個のものであると判断し、それぞれの約束を別個の履行義務として識別します。

企業が顧客に対して、機械の移転と設置サービスの提供を行うケースを考えてみましょう。

顧客が機械を、それ単独で、または他の業者から設置サービスの提供を容易に受けられる場合、要件1、すなわち、「顧客が財・サービスからの便益を、それ単独で、または顧客にとって容易に利用可能な他の資源と組み合わせて得ることができる」を満たします。

また、機械を移転する約束が、設置サービスを提供する約束と、契約の観点から区分して識別できる場合、要件2、すなわち、「財・サービスを顧客に移転するという企業の約束が、契約における他の約束と区分して識別できる」を満たすことになるため、機械の移転と設置サービスの提供は、別個の履行義務と判断されます。

この場合、当該契約においては、機械の移転と設置サービスの提供という、2つの履行義務を識別することになります。

出荷及び配送活動に関する代替的な取扱い

履行義務の識別では、出荷及び配送活動に関する代替的な取扱いが認められています。

日本基準オンライン基礎講座 収益認識03

企業が顧客に商品を販売し、顧客が支配を獲得した後に、商品を顧客に配送する場合、原則的な取扱いでは、商品の移転と配送活動は別個の履行義務として識別します。

つまり、商品の移転と配送活動は、それぞれに履行義務の充足に応じて、収益を認識することとなります。

一方、代替的な取扱いでは、配送活動を履行義務として識別するのではなく、商品を移転する約束を履行するための活動として処理することができます。

この場合、商品の移転と配送活動を区分することなく、一体として収益認識することができます。

Part2

STEP3 取引価格の算定

ステップ3では、契約の取引価格を算定します。

日本基準オンライン基礎講座 収益認識04

取引価格は、約束した財・サービスの顧客への移転と交換に、企業が権利を得ると見込んでいる対価の金額として算定します。

ただし、例えば消費税のように、第三者の代わりに回収する金額は除きます。

STEP3 変動対価

取引価格の算定に際して、考慮すべき事項のうち、変動対価について解説します。

リベートや値引き、業績ボーナスなど、対価が変動する場合があります。

対価が変動する場合には、最も可能性の高い単一の金額である最頻値、または対価を確率で加重平均した金額である期待値のいずれかのうち、より適切に予測できる方法で変動対価を見積ります。

ただし、変動対価の見積額は、その不確実性が解消した際に、それまでに認識した収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限り取引価格に含めます。

STEP3 重要な金融要素

次に、取引価格の算定に際して、考慮すべき事項のうち、重要な金融要素が契約に含まれる場合について解説します。

財またはサービスの移転時期と支払時期が異なることにより、金利相当分に係る重要な便益が顧客または企業にある場合、契約に含まれる重要な金融要素を調整します。

このような場合には、原則として、契約に含まれる金融要素、すなわち、金利相当を分離して、取引価格を算定します。

当該金利部分は、顧客との契約から生じる収益とは区別して、受取利息または支払利息として表示します。

ただし、取引開始日において、財またはサービスの移転時期と支払時期の間が1年以内であると見込まれる場合、金利調整分を調整しないことができます。

STEP4 取引価格の履行義務への配分

ステップ4では、ステップ3で算定した取引価格を、ステップ2で識別したそれぞれの履行義務に配分します。

このとき、取引価格の配分は、各履行義務の基礎となる財・サービスの独立販売価格に基づいて行います。

日本基準オンライン基礎講座 収益認識05

具体的な例で見ていきましょう。

パート1の、機械の移転と設置サービスの提供という、2つの履行義務を識別した例で考えます。

契約の取引価格が90、機械の独立販売価格が60、設置サービスの独立販売価格が40であったとします。

この場合、契約の取引価格90は、60:40でそれぞれの履行義務に配分します。

機械の移転の履行義務には、90×60%の54が配分されます。

設置サービスの履行義務には、90×40%の36が配分されます。

契約に基づく単位及び取引価格の配分:代替的な取扱い

ここで、ステップ1の契約に基づく単位とステップ4の取引価格の配分に関する代替的な取扱いを解説します。

日本基準オンライン基礎講座 収益認識06

ステップ1で契約の結合の要件を満たした場合、原則的な取扱いによると、複数の契約を結合したうえで、履行義務を識別し、取引価格の履行義務への配分を行う必要があります。

しかし、個々の契約が当事者間で合意された取引の実態を反映する実質的な取引の単位であると認められ、かつ財・サービスの金額が合理的に定められており、独立販売価格と著しく異ならないと認められる場合には、複数の契約を結合せず、個々の契約に定められている財・サービスの内容を履行義務とみなし、個々の契約に従って収益を認識することができます。

この例では、機械の移転は60、設置サービスの提供は40として、収益を認識することができます。

Part3

STEP5 収益の認識

企業は、履行義務を充足した時点で、または充足するにつれて一定の期間にわたり収益を認識します。

ここで、履行義務を充足するとは、約束した財・サービスを顧客に移転することをいいます。

基準では、2つの移転のパターンがあるとしています。

1つは、顧客に財・サービスの支配を移転した時点で履行義務を充足するパターン、もう1つは、顧客に財・サービスの支配を一定の期間にわたり移転することで履行義務を充足するパターンです。

いずれのパターンで収益を認識するかは、取引開始時に決定します。

STEP5 履行義務の充足

次のいずれかの要件に該当する場合には、履行義務は、一定の期間にわたり充足されます。

1つ目は、企業が義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受する場合です。例えば、清掃サービスの提供のような典型的なサービス契約が該当します。

2つ目は、企業が義務を履行することにより、顧客が支配する新たな資産が創出されるか、または増価する場合です。例えば、顧客の土地に建物を建設するケースが考えられます。

3つ目は、企業が義務を履行することにより、他に転用できない資産が創出され、それまでに完了した対価を収受する強制力のある権利を有する場合です。例えば、コンサルティング契約で、最終的に顧客に特有の専門的な意見を提供するなどのケースが考えられます。

これら3つの要件のうち、いずれかを満たす場合には、履行義務は一定の期間にわたって充足されます。

いずれの要件も満たさない場合には、履行義務は一時点で充足されます。

STEP5 一定の期間にわたり充足される場合

一定の期間にわたり充足される履行義務である場合、進捗度を測定して収益を認識します。

日本基準オンライン基礎講座 収益認識07

進捗度の測定方法には、アウトプット法とインプット法があります。

アウトプット法とは、現在までに移転した財・サービスの、顧客にとっての価値に着目して、進捗度を測定する方法です。例えば、経過期間や生産単位数に基づく直接的な価値の測定が考えられます。

インプット法とは、履行義務の充足のために使用されたインプットが、予想されるインプット合計に占める割合に基づいて測定する方法です。例えば、発生したコストが、履行義務の充足に必要と予想されるコストの合計に占める割合に着目して、進捗度を測定する方法が考えられます。

日本基準において、特定の方法が定められているわけではありませんが、企業は、顧客への財・サービスの移転を、より適切に表す方法を採用する必要があります。

期間がごく短い工事契約及び受注制作のソフトウェア

なお、期間がごく短い工事契約及び受注制作のソフトウェアに関しては代替的な取扱いが認められています。

日本基準オンライン基礎講座 収益認識08

原則的な取扱いによると、一定の期間にわたり収益を認識するとされる工事契約及び受注制作のソフトウェアであっても、代替的な取扱いでは、一定の期間にわたり収益を認識せず、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識することができます。

すなわち、完成した時点で収益を認識することができます。

STEP5 一時点で充足される場合

一時点で充足する履行義務については、顧客が財・サービスの支配を獲得した時点で収益を認識します。

支配が移転した時点を決定するために、支配が顧客に移転したことを示す指標を考慮します。その指標とは、

  • 企業が資産に関する対価を収受する現在の権利を有している
  • 顧客が資産の法的所有権を有している
  • 企業が資産の物理的占有を移転した
  • 顧客が資産の所有に伴う重大なリスクと経済価値を有している
  • 顧客が資産を検収した

といったことです。これらの指標は、限定的なものではありません。

顧客が、当該資産の支配、すなわちその使用を指図し、残りの便益のほとんど全てを獲得する能力を獲得した時点がどの時点であるかを検討して、決定します。

出荷基準等に関する代替的な取扱い

なお、出荷基準等に関しては代替的な取扱いが認められています。

日本基準オンライン基礎講座 収益認識09

商品または製品の国内販売において、原則的な取扱いでは、商品または製品の支配が移転するとき、例えば、顧客による検収時に収益を認識します。

一方、代替的な取扱いでは、出荷時から顧客に財の支配が移転する時までの期間が通常の期間である場合には、出荷時から顧客に財の支配が移転する時までの期間の一時点で収益を認識することができます。例えば、出荷時、着荷時、または検収時に収益を認識することができます。

ここで、「通常の期間」とは、国内における出荷及び配送に要する日数に照らして取引慣行ごとに合理的と考えられる日数をいいます。

Part4

収益認識に関する適用指針

特定の状況または取引における取扱いとして、「収益認識に関する会計基準の適用指針」において、11の論点に関する適用指針が定められています。

このうち、本モジュールでは、本人か代理人かの検討について、解説します。

総額表示と純額表示

他の当事者が財・サービスの提供に関与する取引の中には、対価の総額を収益として表示することが適切でないケースがあります。

日本基準オンライン基礎講座 収益認識10

例えば、企業が取引先A社から100で取得した商品を、取引先B社に105で譲渡する取引を行ったとします。

企業が、この取引にどのように関与しているかを検討した結果、本人として関与している場合、すなわち商品を自ら提供する履行義務を有するときは、収益を総額表示することが適切です。

他方、企業が代理人としてその取引に関与している場合、すなわち、取引先が商品を提供するように手配する履行義務を有するときは、収益を純額で表示することが適切です。

本人・代理人の判定

考慮すべき指標には、

  • 契約の履行に関する主たる責任を負っている
  • 輸送や返品などの際に、在庫リスクを負っている
  • 価格設定に関する裁量権を有している

ことが含まれます。

ただし、これらの指標に限定されるものではありません。財・サービスを移転する前に企業がその支配を獲得したか否かについて、これらの指標を総合的に検討して判定を行います。

これで、「収益認識に関する会計基準」のモジュールの解説を終わります。

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